てんこ盛り漫画「めだかボックス」

私が面白いと思う漫画はめだかボックスです。いわゆる学園物の漫画で最初期は生徒のお悩みを解決する内容でしたが、すぐに能力バトル展開になり、大量のキャラクターと様々な展開が詰め込まれます。ストーリーが綿密に練られているとはお世辞にも言えませんが、一ページ一ページに勢いがあって飽きさせません。

一番好きなキャラクターは七巻から登場する「球磨川禊」です。序盤で主人公の天敵として伏線がわずかに貼られており、登場シーンからして悪役としての期待を裏切りません。良い事も悪い事も飄々とした態度で受け入れ、他人はもちろん自分さえ大事にしません。そんな彼は「大嘘憑き(オールフィクション)」という、すべてを無かったことにする能力を持っており、実際に自分の気配を無かったことにして主人公達の事を襲った事があります。

『僕は悪くない、だって僕は悪くないんだから』が口癖の彼は、自分の台詞に『』を付けて常に格好をつけているのですが、そんな自分の台詞から『』を外し本音を熱く語るシーンはこの漫画最大の見どころだと思います。

『』の表現のようにユニークな表現が多い漫画で、「私」の事を「ぅ私」というキャラクターや自分の台詞に二重線をひいて本音を隠すキャラクターなどもいて、細かい遊びが多い漫画です。

「安心院なじみ」という漫画として規格外のキャラクターを生み出した功績も大きいと思います。一般的なバトル漫画は一人のキャラクターにつき特殊能力は多くても数個ですが、このキャラクターは一兆個以上の能力を持っています。もちろんその一兆個全てが登場することはないのですが、漫画表現におけるある種の禁じ手を実際に使ってしまったようなキャラクターで、非常に革新的だと思います。一兆個とは言わないまでも作中で数百個の能力は使っており、六ページにわたって背景に特殊能力名がずらりと並んでいるシーンの迫力は相当なものがあります。このキャラクターが登場してからの一連の流れはいわゆる「夢落ち」終わるのですが、このキャラクターらしくただの夢落ちでは済まされず、これもまた漫画界の歴史に残っても良いものだと思います。

原作者はのちに「キャラクターの邪魔をしないことが仕事だった」と俯瞰で見るような事を語っています。その言葉の通り色々なキャラクターがときには行きすぎなほどに動き回った作品です。

余談ですが「喜界島もがな」という簿記一級を持っているキャラクターの影響を受けて、私も実際に簿記試験を受けてしまったことがあります。